目次
この前外来に訪れた患者さんです
50代男性 会社経営 Aさん
Aさん 「最近、体重が増えてきました。しかも、疲れるので以前通っていたゴルフにも
行かなくなってしまいました。それに女性にも興味がなくなってきて
うつですか? 男性更年期っていうことも聞いたことがあるのですが、
どうなんでしょうか? 」
私 「そうなんですね。最近、頻尿になったなんてことはないですか? 」
Aさん 「そういえば一年くらい前から夜にトイレに1~2回起きることがあります。」
私 「確かに男性にも更年期ということはありますね。
しかし、うつ病や他の病気との鑑別も必要なので問診票にお答えいただいたり、
血液検査などの検査をしてみましょう。」
ということで今回はいわゆる男性更年期についてまとめてみました。
症状は?
病気ではないのになんとなく体調が不良そして
あなた、もしくはあなたのパートナーはこんな症状がないでしょうか?
精神症状
健康感の減少
不安
イライラ
うつ
不眠
集中力の低下
記憶力の低下
性欲の減少
身体症状
筋力低下、筋肉痛
疲労感
ほてり 発汗
頭痛、めまい、耳鳴り
性機能低下 ED
頻尿
morning erectionの消失
特にピンクの症状があった場合は要注意、あなたは男性更年期障害の可能性があります。
日常の診療で使われている問診票として
AMSスコア(Aging Male’s Symptoms)というのもありますから
性腺機能低下の症状に対する問診票にはIIEF5というのがあります。
いわゆる男性更年期、LOH症候群とは?
そもそも男性に更年期ってあるのって思われるかもしれませんね。
更年期障害って女性に特有と思われがちですが、男性にも更年期の症状があるのです。
男性ホルモンも個人差はあるものの、加齢とともに穏やかに低下します。
女性の場合は閉経前後10年間を更年期といいます。(45~55歳くらい)ですが
男性の更年期は40歳以降どの年代も起こる可能性があり、男性ホルモンの減少によるものを
加齢性腺機能低下症、または LOH(late onset hypogonadism)症候群といいます。
男性ホルモンとは主にテストステロンのことを言います。次にテストステロンのことについてお伝えします。
できる男はテストステロンが高い!
テストステロンが高い人は
年収が高い
イケメンが多い
子供を作る能力が高い
運動能力が高い
(Proc biol Sci 2011
Proc Natl Acad Sci USA 2008
A J Hum Biol 2008
J sport Sci 2011
Asian J Androdol 2011)
テストステロンが高い人は成功する。
(Proc Natl Acad Sci USA 2008)
すごくないですか?
つまり できる男はテストステロンが高いということなんです!
他にも
テストステロンは筋肉の量と強度を保つのに必要で、造血作用を持ち、男性の性行動や
性機能に重要な役割をして、 集中力やリスクを取る判断をすることなどの
高次精神機能にも関係します。
テストステロンを増やすにはどうしたらいいのか?
治療はどのようにしたらいいのでしょうか?
テストステロンが少ないのだからホルモンを補充すればいいと思いますよね。
これも大事な治療の一つです。(これについては後述しますね)
でもその前に以下を見直してみてくださいね。
テストステロンが減少するような原因が日常にあるかもしれないのです。
テストステロンを増やすように日常生活を見直す
ストレス対策をする
40代50代は働き盛り 仕事のストレスがかかりやすい時期です。
ストレスがかかるとストレスホルモンが出ます。長期にわたって慢性的にストレスがかかと、副腎に負担がかかり、その結果、性ホルモンが安定しなくなることがあります。
女性でも例えば、過度なダイエットをしたり、ストレスがかかったりすると月経がこなくなったりということもありますよね。ですからストレス対策はとっても大事なことなんです。
マインドフルネス瞑想などもストレス対策に効果的ですから、
ぜひ、日常に取り入れてみてくださいね。
ストレスホルモンを分泌する副腎を労わるためには
1. 食事 2 運動 3 日内リズムや睡眠を見直すこと
炎症があればその対策をすることが
大事になってきます。順番にお伝えしますね。
食事、バランスよく良質なタンパク質をとる。
良質なタンパク質:テストステロンを分泌する筋肉を育てるためにも
良質なタンパク質をしっかりとる(朝食からタンパク質をとる)
良質な糖質:ストレスがかかっているときは過度な糖質制限はお勧めできません。
精製された砂糖は避けた方がいいですが、
良質な炭水化物(全粒穀物)を取りましょう。
良質な油:炎症抑えるオメガ3系の油(魚油 アマニ油、エゴマ油)を積極的にとる
野菜や果物はたくさん(血糖値の高い人は果物の取りすぎは注意)
運動
運動をすることがテストステロンや成長ホルモンが分泌を促します。
大きな筋肉を意識した筋トレ、スクワットや腹筋や背筋を鍛える
有酸素運動も取り入れて生活に運動を定着させることが重要です。
日内リズムと睡眠
朝日を浴びて、朝食をとり、体内時計のリズムを取り戻すこと
そして、テストステロンは夜間に作られて質の良い睡眠をとることも重要です。
テストステロンの濃度は午前中に高いので血液検査での測定は午前中に行います。
漢方やサプリメント
漢方薬も有効なことがわかっています。
柴胡加竜骨牡蛎湯や
補中益気湯 桂枝茯苓丸 八味地黄丸 当帰芍薬散、加味逍遙散など
サプリメントやハーブ
トンカットアリ
アシュワガンダ
抗酸化作用のあるポリフェノール
亜鉛 亜鉛は男性にとっても重要なミネラルです!
ビタミンC ビタミンE
COQ10やカルニチンなどのミトコンドリアの機能を改善させるサプリ
漢方やサプリは医師と相談しながら試してみてくださいね。
テストステロンを補充する
エナルモンデポという注射製剤やテストステロンゲルなどがあります
クリニックで、問診、採血、他副作用や禁忌などをチェックしてから行います。
テストステロンを補充することで期待できることは
性欲と性機能の改善
骨密度の上昇
気分、やる気 抗うつ QOLの向上
体脂肪の減少と筋肉量の増加
メタボ 脂肪肝の改善
排尿状態の改善 などがあります。
まとめ
男性更年期、LOH症候群は男性ホルモンが加齢とともに徐々に下がることによって
何となく不調だったり、性欲が減少する症状が続くことをいいます。
大事なのはテストステロンを増やすように
生活習慣(ストレス対策、食事、運動、睡眠、日内リズム)を
見直していることが大切でしたね。
テストステロンのホルモン補充療法も選択肢の一つです。半年から1年くらいで離脱することもあるようです。
あとは個別にあった、漢方やサプリも併用するのもいいと思います。
参考文献
加齢男性性性腺機能低下症の手引き 日本泌尿器科学会
男性性腺機能低下症ガイドライン2022 日本内分泌学会
その他